前回の内容では基礎知識として、コケの生態やテラリウムで起こりうるトラブルについてお話をさせていただきました。
小さな容器の中で侘び寂びのある自然を楽しめるコケテラリウムですが、コケにとっては本来生息している環境で生活をするわけではないため、「思ったように育たない」といったこともありがちです。 しかし、コケは強い生命力を持った植物ですので、適切にケア[…]
今回は、それらを踏まえ、具体的な対策や育成方法について解説したいと思います。
育成段階におけるカビ発生の予防策や湿度管理、育成成功の目安などについてお話ししています。参考になれば幸いです。
こんな人にオススメ
- 育成方法を具体的に知りたいひと
- コケの成長の目安を知りたいひと
コケ育成のポイント
コケは暑さや乾燥、蒸れに弱い植物です。しかしながら光合成のために日光や水分を必要とする特性からその水分量等について「匙加減がわからない・・・。」と、いった疑問もあると思います。
経験上、目安になりそうな表現を心がけつつ、それぞれのポイントをご紹介したいと思います。
湿度管理
土が湿り気を帯びている程度の状態が適切です。少ない水分量でも、気温が低下し容器内が結露しているときはコケも生き生きとしています。
逆に容器を傾けたときに、水が溢れる場合は水が多すぎます。
コケは根本から水分を吸収するわけではないので、“体表が満遍なく湿っている”方が過ごしやすいようです。
水分量が多いと窒息や蒸れなどの原因になります。そのため、びしょ濡れではなく艶感・濡れ感程度の色気のある雰囲気をキープできると良好です。
温度管理と光
春先でも日差しが当たり、気温が高くなるとコケは次第に弱っていきます。
そのため、直射日光はNGです。カーテンで仕切った窓の近くなど、“間接的に”光を取り入れられる環境が適切です。
夏場はカビも発生しやすくなるため、外出等で家をあける際は冷蔵庫やワインセラー、ペットを飼っている方であればエアコンの効いたお部屋などに一時避難させておくことをオススメします。
コケの生育適温は25℃前後といわれていますが、私の場合、室内かつ蓋付きの容器のテラリウムは20℃前後を目安に警戒体制に入ります。
人にとってそこそこ暑いと感じる場合、容器内のコケにとってはサウナに閉じ込められているようなものだと想像してください。
水について
水は水道水を使い、霧吹きで行います。
時々、種子植物の要領でジョーロや蛇口から容器にそのまま水を注ぐ方もいますが、レイアウトが乱れることや、水分過多による蒸れといった不具合を招きやすくなります。そのため霧吹きはとても重要です。
また、水は衛生面やpH値の観点からも水道水が適切です。
苔は弱酸性の水質を好みます。水道水は中性の水質を基準としていますが十分に育ちます。逆にアルカリ性は好ましくありません。また、ミネラルウォーターは菌の繁殖や藻の発生原因にもなり、特別与えるほどのメリットはあまりないといえます。
容器の掃除
容器内の水滴は放置すると水垢やカルキなどで汚れ、景観を損いますのでティッシュや丈夫な繊維質のペーパーで拭き取ります。
ちなみに、私はキムワイプという製品を使用しています。
ティッシュでも十分ですが、濡れてちぎれてしまったり容器にカスが残ってしまうなど、口の狭い容器で作業するには不便を感じることがあります。
キムワイプはしっかりとした繊維で、空気で汚れたガラスのくすみなどもスッキリ落とせますので重宝しています。
水の入れ替え
如何に湿度・温度管理をおこなっても、古くなった水が沈澱していくと菌が繁殖しやすくなります。
また、室内は埃や人の皮脂などカビが繁殖する資源も豊富です。
容器内の水分量は、コケの体表中に補われた水分の方が容器の底の水がなくなるよりも、早く乾燥するため、水をあげる頻度が多くなりがちです。
環境を浄化し、循環させるためにも水抜きはこまめに行ってください。
時間に余裕のある時は多めに水をあげてしっかり水抜きをすると、容器を清潔に保ちやすくなります。
水の入れ替えにより、土や内部に混入した、不要な養分や汚れを流すことで、藻やカビの発生を防ぎ、テラリウムの景観を維持する効果が期待できます。
コケの成長を考えるだけではなく、容器を汚さない工夫もテラリウムでは重要です。
換気
換気により蒸れの防止と空気の入れ替えを行います。
空気中に溶け出した新鮮な二酸化炭素を容器に取り込むことで、コケの光合成を促します。
私がよく行くコケ農家さんのお店では、水をあげた際、必ずといっていいほど毎回換気を行っているようです。
ただし、開放状態ではコケの乾燥、埃の侵入といった恐れもありますので、換気をする際は画像のように半開閉状態にしてコケが乾燥しないように注意してくだい。
育成成功の目安
コケが環境に適応している状態の目安になるものを記載しておきます。
着生
着生とはコケが土壌に根付き、環境に適応した状態ですが、仮根が土や石、流木などに絡みつき付着した状態をいいます。
コケを撒いた当初はコケの表面が乾きやすくなっていますが、着生すると積極的に周囲の環境から水分を取り入れやすくなります。
その結果、コケ自体が湿潤な状態を保ちやすくなります。
原糸体
胞子が発芽した直後に細い糸状の配偶体を伸ばし、小さな芽を出します。
流木や石などにも張り付き発芽すると小さな緑色の葉を確認することができます。
原糸体を伸ばさないものもありますがその場合、株元や茎からポツポツと芽が出ますので、安心してください。
期間
発芽の期間はコケの種類によってまちまちです。
発芽までは3〜6ヶ月程度気長に様子を見ましょう。
極端な変色が見られない限りは生育を期待できますので、安心して育ててください。
黒ずんで滑りがあったり、完全に干からびているような状態のものは細胞が壊れている可能性がありますので、そうした部分は取り除いて環境を整えましょう。
まとめ
コケは軽く湿り気を帯びた状態と涼しい環境を好みます。
育成時はコケの状態だけではなく、容器内部が衛生面を保ちやすいように水抜きや換気をして対策を行いましょう。
メンテナンスや適応しやすい環境を整えてあげれば、栄養はほとんど必要ありません。その点では育てやすい植物かと思います。
ただし、環境に適応するまではコケが弱ってしまうことも多々あります。
それでも時間をかけて面倒を見てあげれば、発芽し次第にコロニーを形成します。
気楽に自然が形成される様を楽しんでみてください。
『ステップ③ではいよいよ、“植付け・レイアウトの方法とポイント”を解説しています。早速、苔を育ててみたいという方は非ご覧ください。』
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