前回までの内容では「育成方法」に焦点を当てて解説をしました。
前回の内容では基礎知識として、コケの生態やテラリウムで起こりうるトラブルについてお話をさせていただきました。 [sitecard subtitle=関連記事 url=https://000-log.com/archives/4138 tar[…]
今回はいよいよ植え付け、レイアウトについてのお話です。
前回までの内容を踏まえ、「コケが育つこと、容器を汚さないこと」をポイントにコケの植え付けとレイアウトについてご紹介します。
こんな人にオススメ
- コケの植え付け方を知りたいひと
- レイアウトのコツを知りたいひと
- 育成過程のメンテナンスの負担を軽減したいひと
植え付け方法
コケは保湿と光を取り入れられる環境であれば、さまざまな方法で植え付けを行うことができます。
ご自身がイメージしているレイアウトに合わせて植え付け方法を検討してみてください。
各種植え付け方法の特徴もあわせてご紹介します。
基本編
①まき苔
細かく分解したコケを土の上にまき育てる方法
- メリット:自然な生育を観察できる
- デメリット:乾燥しやすく、着生に時間がかかるため、こまめに保湿が必要
②移植法
土に差し込むかたちでコケを植え付ける方法
- メリット:好みのレイアウトにしやすい
- デメリット:差し込むためにコツが必要。レイアウトに時間がかかる。
③はり苔
既にコロニーが形成された、コケをそのまま植え付ける方法
- メリット:コロニー(群生)を形成しやすい
- デメリット:デメリット:レイアウトが限定される
応用編
ここからは私が実験的に行い、成功した植え付け方法です。
④まぜ苔
コケの頭が出るくらい浅く土とコケを混ぜ合わせ、タネをつくりそのまま植え付ける方法
- メリット:土がコケに付着し、湿度をキープしやすくなる
- デメリット:しっかり育つまではテラリウムとしの見た目が微妙
⑤コロニー
コケを細かく刻み軽く水気を足します。これをすくい土の上に満遍なく敷き詰める方法
- メリット:密度の高いコロニーを形成しやすい
- デメリット:作業に手間がかかる
どの方法で植え付けを行うかは、コケの種類や完成イメージを想像しながら、お好みでご検討ください。
植え付け前にやること
ポイントは「汚れを取り除く、余分な栄養を落とす」です。
理由として、「コケが新しい環境に適応するため、状態をリセットすること」「カビや藻の発生を防止するため有機物などを取り除くこと」があげられます。
コケの下処理
仮根を多少残す程度にして、土やゴミが付着した部分はカットします。
カットが終わったら水の張った容器で軽くすすいで、不純物を取り除きます。
その後軽く指でほぐし、植え付けしやすいように分解し、プラカップなどの容器で保管しましょう。
注意点として株元があるものは、切り取らずそのまま使用します。カットしても育ちますが、著しく成長が遅くなります。
土の下処理
コケ専門店で売っている土は適度な保湿ができ、水はけの良い土や砂、菌の繁殖を防ぐ燻炭などがバランスよく配合されています。そのため、基本的にはそうした専用の土を使用することを強くオススメします。
しかし、そのまま利用すると運搬時の細かな振動などで溜まった土埃なども混入するため容器の汚れの原因にもなります。
よく洗い余分な栄養や土埃を洗い流してしまいましょう。
熱処理して焼いてある土であれば、量は減りますが土がほぐれてしまう心配はありません。洗ったらしっかり乾燥させてから使用します。濡れた状態だとレイアウトが難しいためです。
流木や石
流木や石は一度丸洗いし、カビ防止剤を希釈した水に入れて15分程度薬剤を染み込ませます。(アク抜きがされていない流木はアク抜きをしてからお試しください。)
私は「ベンレート」を2000倍に希釈し使用しています。
石も水が浸透してくると気泡がぷくぷくと出て内部に浸透するので、効果は期待できます。こちらも水気を切り一度乾燥させてから使用します。
植え付け後にやること
目土
まきゴケなどの方法では目土といって細かい土や砂を被せませす。
これにより着生を助け、コケの体表に土が付着することで保湿効果を発揮します。
コケが光を取り入れられる程度にサラサラっと軽くまぶすイメージで土を被せます
栄養剤
着生をすすめるために栄養剤を使います。
使用する栄養剤は「メネデール」です。私は育成過程で「ハイポネックス」も使用していますが、育て始めはメネデールがオススメです。
その理由は、メネデールの場合植物の栄養吸収効率が良いため、着生が早いことや余分な栄養を土に残さないといった特徴があります。そのため栄養過多による藻やカビの発生を抑えつつ、コケの生育を促します。
栄養剤にも種類があり、土壌に馴染みじっくり環境を整えるタイプと、ダイレクトに吸収しやすいものがあります。
前者は植物が環境に適応した頃に住まいを快適にするために使用します。
「メネデール」の分量については私の場合ですが、1000倍程度に希釈して使用しています。希釈目安は、水200mlに対しメネデール0.2mlです。
霧吹きの容量が大体200ml、スポイト1滴で0.05mlと言われていますので、4滴ほど希釈し使用しています。コケの成長は3ヶ月〜半年とゆったり進むため最初に使用してコケが湿度を保っているようであれば、育成過程では頻繁に与えなくても大丈夫です。
レイアウトのコツ
レイアウトは事前に決める
石や流木を用いる場合は、あらかじめ位置を決め添えていきます。
コケを入れてからレイアウトを決めると位置が限定されてしまったり、コケを下敷きにして圧迫する恐れがあります。
また、イメージを事前に決めておくことで、植え付け方法や必要な道具も想像しやすくなりますので、完成の計画はしっかりと固めてから作業に入りましょう。
傾斜をつける
容器の前後にはっきりと差が出るよう傾斜をつけて土を盛り付けるのがオススメです。
生花などの作品も全面に広がっているように見えて主役の顔は、鑑賞する人の方を向いています。
下地をつくる
レイアウトがある程度決まったら、水を軽く吹きかけ、下地の形状を固定しましょう。
この段階ではコケを投入していないことを前提にしています。
コケを植え付けた時や目土を被せた際の量などを想像しながら少し浅めに下地の土を固定できるといいと思います。
一概にはいえませんが、完成イメージの3~5mm程度低めに下地を作るとイメージ通りに植え付けを行えることが多いです。
コケは中央から広がりをもたせて添える
容器のなかにぎゅうぎゅう詰めにして敷き詰めると、圧迫感のある印象を与えます。
成長するにつれ自然とボリュームがでてくるので、コケが容器の縁にピッタリとくっつかない程度に隙間をつくると侘び寂びがあって好印象です。
アクセントを意識する
オオカサゴケやホウオウゴケのような高さのあるコケが中央に一つあるだけでも、印象がまとまります。
組み合わせる際は、コケの環境(生息地)や相性に配慮しつつ、「平面+高さ」の2種類のコケがあるとテラリウムとしてのデザイン性が増します。
移植法で植える場合のコツ
下地を固定した土は硬く、移植する際はピンセットの使いかたにコツが必要です。
根元まで、垂直にコケを掴みそのまま差し込みます。差し込んだらコケをマドラーや細い棒で抑えピンセットをそっと抜くと上手くコケが固定されます。
移植法で植え付けを行う方は、時間がかかるとコケが傷んでしまう可能性があるため、作業前にオペのイメージを事前に予習しておいてください。
まとめ
基本的にはどのような植え付け方法でもコケは育ってくれます。
そのため、最初の植え付け方法やレイアウトでテラリウムとしての楽しみ方も幅広く変化します。
ご自身にあった手法を取り入れつつ、テラリウムを楽しまれてください。
綺麗な景観を保つためのコツ
- 植え付け前の下処理を忘れずにおこなう
- レイアウトは事前に想定、前後を明確に
- 植え付け方法はコケの種類にあわせつつも自由
ステップ①〜③まで当ブログをご覧くださりありがとうございます。
苔の育成やレイアウトはそれぞれの工夫や工程において要点をご理解いただけたら、ご自身のインスピレーションでいかようにも楽しめる、ある意味クリエイティブな植物だと個人的には思っています。
また、コケは失敗にも寛容な植物です。多少のエラーもしぶとく対応し、何だかんだ育ってくれます。
是非、自由にテラリウムを楽しんでください。
使用した道具やおすすめの購入場所(実店舗)についてはこちらのページでまとめています。参考としてご覧ください。
苔テラリウムの作り方から育て方「ステップ①〜③」をご覧いただきありがとうございます。 こちらのページは苔テラリウムにて使用する道具を一覧で整理したものです。参考用にご利用ください。 容器内で作業がしやすいよう各種ツールの“サイズ感”がポイン[…]