実際の靴の状態に合わせて、シューケアの基本的な手順を2回に分けて解説したいと思います。
また、基本編ではシューケアの手順について、応用編では基本編で取り扱わなかった靴の水洗いやソールのケアについてお話しします。
基本の手順だけ知りたいという場合は、基本編の①、②をご覧ください。
基本編①では、靴の「汚れ落とし」 について扱います。
こんな人にオススメ
- シューケアの手順を知りたい方
- シューケアの工程の“意味”を知りたい方
- “効果的な”簡易ケアを行い方
靴の状態を確認する
シューケアに入る前に「どのような仕上がり」にするか予めゴールを決めておきます。
今回使用する靴はビジネス向けの靴ですが、雨で濡れて、鏡面が剥がれています。
少し期間が経過しているので「乾燥と革の内部に汚れが溜まっている状態」が気になります。
ドレッシーな感じにするよりも“素材感”を整えつつ、柔らかいツヤ感のある雰囲気にしたいと思います。
靴の状態や仕上がりのイメージに応じて使用するリムーバーやクリームを変えています。
今回使用した道具は『【参照用】「シューケアの手順 基本編〜応用編」の記事で紹介した道具一覧』からご覧ください。
その他、使用した靴のブランドはこちらです。
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靴磨きの工程とポイント
靴磨きのポイント
- 汚れ落とし:泥や化学物質、不要なものを除去する
- 栄養補給:不足した水分や油分を加え、革の素材を整える
- 保護:外的なダメージから傷がつかないよう革を守る
靴磨きはこれら3つのテーマを攻略することで最大限の効果を発揮します。
手順を抑えて適切なシューケアを
3つの役割を補えれば手順はバラバラでもいいのかというと、それは間違いです。
必ず「汚れ落とし、栄養補給、保護」の順番でシューケアを行います。
その理由は、靴磨きにおける工程それぞれに異なる溶剤や成分を用いて「磨く」という作業を行うためです。
例えば、汚れを落とす時は「古いクリームを除去するための溶剤」を使用するため、先にクリームを塗って汚れ落としを使うと、新しいクリームごと除去することになります。
また、保護に用いた硬い被膜の上にクリームを塗っても革に栄養が浸透しない。と、いう結果を招いてしまいます。
そのため、手順を守ってケアを行うことは非常に重要です。
美しい完成を実現するポイント
全ての段階において布やブラシを用いて汚れの拭き取りやクリームの塗布を行います。
これは「お化粧」のように「下地からクリーム、皮膜」と段々と“下地を整えながら塗り重ねる”イメージです。
重要なのは常に下地が「均一に美しく保たれること」
凹凸の上に皮膜を作ってもザラつきのある表面になってしまうので注意が必要です。
簡易ケアでも効果は発揮できる
「そんなに何度も気を遣いながら磨くとか大変そう」と思われた方も安心してください。
実は栄養補給と保護は「乳化性クリーム」を使用することで完了させることもできます。
「乳化性クリーム」には革の栄養に必要な水分や油分、保護に必要なロウが全て含まれています。
その為必要最低限でシューケアを行いたい場合は、「汚れ落としと乳化性クリームの塗布」2つの工程だけでも大丈夫です。
汚れ落としの手順
使用する道具
汚れ落としの道具
- シューツリー(代用可)
- 馬毛ブラシ
- クロス(布)
- クリーナー・リムーバー(靴磨き用の溶剤)
シューツリー
革をストレッチし、毛穴やシワに詰まった汚れなどを拭き取りやすくするために使用します。
シューツリーを持っていないという方は、丸めたキッチンペーパーや新聞紙などを靴に詰め、靴のシワをしっかりと伸ばした状態にします。
布
Tシャツの切れ端や専用のクロスを用います。
汚れ落としの手順
①ブラッシング
リムーバーをつけて汚れを拭き取る前に、埃や細かい砂、泥などを「馬毛ブラシ」で落とします。
埃は水分を含むと表面に残りやすくなります。そのため、埃を払わない状態でリムーバーをつけると埃が伸びるため逆に汚れを目立たせてしまいます。
また、砂が付着した状態で拭き取りを行うと革に傷をつけてしまう恐れがあるためです。
②汚れ落とし
まずは踵やつま先の表面にコーティングされた鏡面部分を剥がしていこうと思います。
もし、お手持ちの靴が鏡面仕上げをしていない場合や、鏡面に割れが見られない場合はこの工程を飛ばし「①ブラッシング→③汚れ落とし」をご覧ください。
今回は、BootBlackのハイシャインクリーナーを用いて、鏡面を溶かしながら優しく拭き取ります。
保護に使用したワックスは層の最上部に位置しています。この後の工程で革の内側の汚れもしっかりと落とせるよう、まずは保護皮膜を剥がします。
ちなみに、ワックスはつま先や踵のように擦り傷のつきやすい場所に使用します。
ハイシャインクリーナーは厚みのある硬い層を溶かすための比較的強い溶剤なので、それ以外の場所に使うと革が弱ってしまう場合があります。部分使用に留めましょう。
③汚れ落とし
靴全体の汚れ落としを行います。
②の工程では「保護被膜のロウ」を溶かし除去するための工程でした、③は古いクリームや汚れを取り除くための工程です。
主にくすみや油分を取り除きます。
リムーバーを布が軽く湿る程度に馴染ませ、内部の汚れを浮かしながら優しく拭き取ります。
布が汚れてきたら、新しい面に変えて同じ工程を繰り返します。
いきなり沢山の量をつけてしまうと革の表面にリムーバーが残り、溶剤が革を傷めてしまうためリムーバーは少量づつ使用しましょう。
靴のパーツ毎に拭き取りを完了させるのがオススメです。
つま先部分、踵部分など小さい面積で拭き取りを完了させていくことで、靴へのダメージを最小限に抑えることができます。
また、使用するリムーバーによっては、古いクリームが革に残っていることもありますが、やりすぎると銀面を傷つけてしまうため、完全にクリームを落としきらなくても大丈夫です。
今回は革が乾燥気味なためタピールのレーダーオイルを使用しています。使用するリムーバーは靴の状態に合ったものを選びましょう。
私の靴のように乾燥が強い状態ではない場合はモゥブレイのステインクレンジングウォーターなどがオススメです。
ケアが必要になる時の革靴の状態は「乾燥、ひび割れ、泥汚れ、雨染み、カビ」など、水分量も質感もその時々で様々です。 あわせて、これだけの汚れを落とさなければいけないクリーナーは非常に強力なので誤った使い方をすると革にダメージを与えてしまうこと[…]
④ブラッシング
汚れ落としが完了したらもう一度、「馬毛ブラシ」で靴全体を漫然なくブラッシングします。
汚れ落としの後にブラッシングを行う理由は布の繊維や埃を払うことと、拭き取りきれなかったリムーバーを取り除くために行います。
リムーバーは汚れ落としの段階でしっかり落とされていることが大前提ですが、それでも指先の厚みや布の繊維では拭き取りが行き届かない部分があります。これは革の表面にムラとして残ることもあります。
次の工程に移る前に余計な成分を除去し、ムラを無くすためにも最後の一手間としてブラッシングを行います。
まとめ
第一段階の汚れ落としはここまでで完了です。
状況に応じて必要な工程を組み合わせてください。
汚れ落としでは「革にダメージを与えるものを除去すること、ケアでダメージを与えないこと」がポイントです。
また、最後にブラッシングをして「下地を均一に整える」ことで、次の工程のシューケアクリームが革に浸透し、綺麗な皮膜がのりやすくなります。
そのため、シューケアにおいては最も気を遣う重要な工程でもあります。
どんなに化粧を取り繕っても、自然の美しさを伴ってこそ理想的な完成に近づけるといったイメージです。
続編の基本編②では「栄養補給・保護」の手順について解説しています。あわせてご覧ください。
実際の靴の状態に合わせて、シューケアの基本的な手順を2回に分けて解説したいと思います。 また、基本編ではシューケアの手順について、応用編では基本編で取り扱わなかった靴の水洗いやソールのケアについてお話しします。 基本の手順だけ知りたいという[…]