ケアが必要になる時の革靴の状態は「乾燥、ひび割れ、泥汚れ、雨染み、カビ」など、水分量も質感もその時々で様々です。
あわせて、これだけの汚れを落とさなければいけないクリーナーは非常に強力なので誤った使い方をすると革にダメージを与えてしまうこともあります。
そこで今回は「革の状態に合わせたレザークリーナーのオススメや使用上の注意点」についてお話ししたいと思います。
こんな人にオススメ
- レザークリーナーの使い方を知りたい方
- 革の状態に合ったクリーナーを選びたい方
- クリーナーを使用する上での注意点を確認したい方
レザークリーナーとは?
レザークリーナーはシューケアのマストアイテムと言っても過言ではありません。
「なぜ、そう言い切れるのか?」について本題に入る前に大事な“レザークリーナーの用途”についてお話ししたいと思います。
ケア不足がもたらす革のトラブル
汚れの種類
- 古いクリーム:油・ロウ
- 埃:砂埃や土埃
- 化学物質:コンクリートや雨に含まれる化学物質
靴に付着する汚れは泥や土だけではありません。
時には雨や水に混ざってコンクリートに含まれる化学物質が革の内部に浸透してしまうこともあります。
これらの要因は靴の外見的な印象を損なうだけではなく、革にとって大きなダメージにつながりかねないものです。
「乾燥やひび割れ、革が呼吸できない(質感を損なう)、銀面(革の表面)が浮いてくる」など、素材を綺麗に保つためにも靴を傷める原因はなるべく取り除いてあげるのがオススメです。
レザークリーナーの役割
レザークリーナーを使用することで改善できる問題は大きく分けて2つあります。
汚れ落とし
目にみえる汚れを取り除き外見を整える。ダメージの原因を取り除く。
下地づくり
土や砂、細かな汚れが残っていると表面に凹凸が生まれ滑らかな質感が出にくくなリます。そのため、表面の余計な付着物を取り除くことで、クリームを塗った際、綺麗な皮膜を張れるようにします。
また、付着していた汚れを落とすことで新しいクリームが浸透しやすくなるため、革の素材感が整いやすくなります。
化粧のりの良い素肌を保つイメージです。
レザークリーナーの使用方法
使用方法
- 布が軽く湿る程度にクリーナーを少量染み込ませる
- 表面の汚れを溶かしながら落とすように優しく拭き取る
あまり力を入れすぎると溶剤や水分で柔らかくなった革が傷ついてしまうこともあります。擦るよりも優しく拭うイメージで靴全体の表面の汚れを落とします。
表面の汚れが落ちれば、古いクリームを落とし切る必要はありません。新しいクリームを塗る際に乳化することで靴に必要な栄養として再利用します。
その他、強いクリーナーは溶剤の匂いが強いものもあります。換気をして体調を崩さないように注意してください。
水と油など本来混ざり合わないものが、圴一に混ざり合うこと。
ちなみに、シューケアクリームの成分も水と油です。そのため、乳化性クリームといわれています。
【革の状態別】レザークリーナーのオススメ3種+1
日常使い
M.MOWBRAY(モゥブレィ) / ステインクレンジングウォーター
- 成分:オリーブオイル、ホホバオイル、オレンジオイル、キャスターオイルなど
- 特徴:有機溶剤不使用かつ天然成分配合の革に優しい水性クリーナー
- 使用するタイミング:くすみや細かな傷、日常のこまめなケア
天然成分を使用し、革に潤いを与えながら表面の汚れを落とすことができる製品です。
「しっかりと古いクリームを落としたい」という場合には不向きですが、革にダメージを与える心配がないため、こまめなケアに最適です。
シューケアを頻繁に行う場合は、革の保湿のためにケアを行うことがほとんどです。そのため、激しく汚れを取り去るよりもダメージを抑えるということが重要です。
しっかり汚れ落とし
SAPHIR(サフィール) / レノマット リムーバー
- 成分:有機溶剤など
- 特徴:様々な汚れから古いクリームまで革製品を丸裸にするほど強力な汚れ落とし
- 使用するタイミング:革をリセットしたい時、鏡面磨きを剥がしたい時
かなり強力な汚れ落としです。強く擦ると色落ちや銀面が剥がれる原因になるため、弧を描きながら優しく拭き取るように使用するのがオススメです。
雨で鏡面(つま先などのツヤツヤした仕上げ)が剥がれてしまった時やケア期間が空いてしまった靴など、革をリセットしたいときに使用するのがオススメです。
時々古くなったクリームの層を剥がすことで革が呼吸をしやすい状態をつくります。革は適切な水分量を空気中から吸収したり、放湿することで素材感を維持しています。クリームで表面を保護していると機能しづらくなるため、半年に1回程度、靴を裸にしてあげることでハリのある柔軟性が蘇ります。
乾燥した革に最適
TAPIR(タピール) / レーダーオイル
- 成分:ひまし油、なたね油、バルサムテレピンオイル、オレンジオイル、酢
- 特徴:汚れを落としながら油分を補うことができるオイル
- 使用するタイミング:革が乾燥気味のとき
汚れ落としとしての効果も高いですが、主たる特徴は“油分を補えること”です。
かなりの期間、放置されて硬くなった革、水で濡れて乾燥した革などへの使用がオススメです。
私の場合、素材感をそのまま露出させたような革製品(ベジタブルタンニンなめしの製品など)は乾燥しやすいため、そうした小物のケアなどにも使用しています。
ただし、あまり塗りすぎるとベタつきの原因になるため、少量をとり薄く馴染ませるように汚れを落としてください。
ベタつきがそのまま残るとホコリなどが付着しやすくなりますので、扱いには注意が必要です。
オイルを取りすぎてしまった時はティッシュや新品の布に余分なオイルを吸収させて適量が残るようにしましょう。
鏡面を剥がすことに特化したクリーナー
BootBlack(ブートブラック) / ハイシャインクリーナー
- 成分:有機溶剤、ろう
- 特徴:鏡面の皮膜を落とすことに特化したクリーナー
- 使用するタイミング:つま先や踵の鏡面仕上げを剥がしたいとき
「鏡面の皮膜を剥がす」ということだけ考えれば、レノマット リムーバー(SAPHIR)でも事足ります。そのため、見出しには「+1」としました。
ちょっとこだわりたい人向けの製品ですが、私はこのハイシャインクリーナーが好きです。
ハイシャインクリーナーは他の製品と違いクリーム状になっています。揮発することなく硬いワックスをしっかり溶かしてくれるので、拭き取りにも力を入れる必要がありません。
どのクリーナーを使う際も“優しく”と強調していますが、「染み込まず、表面のロウをしっかり溶かす」ことで、よりソフトな磨き心地で効果を体感できます。
ただし、ロウのようなしっかりとした硬い皮膜部分以外での使用は適していないため、全体的に汚れ落としをしたい方は他の製品をお試しください。
まとめ
汚れ落としも種類によって、その効果や特徴は大きく異なります。
また、成分の特性上、使用方法を誤ると革本体にダメージを与えかねないため、扱いがデリケートな製品でもあります。
お手持ちの革の状態に合わせてレザークリーナーを使用されることをオススメします。
クリーナーについて
- クリーナーの役割は汚れ落としと下地作り
- 革の状態を見極めて目的に合った製品を選ぼう
- 使用時は布に適量を染み込ませ“優しく”拭き取る
汚れを綺麗にして下地を整えた革はクリームを入れた時の輝きもひとしおです。
大事に手入れした靴はその分物語を伴って革が育ってくれるので、最初の一手間を忘れずに、これからも靴磨きを楽しもうと思います。