一括りにクリームと言ってもブランドやラインナップ、グレード、とにかく種類が多く「実際どれがオススメなの?」「何を買えばいいかわからない?」と、いうように迷われる方も多いと思います。
そこで今回は、仕立てた際の“見た目の印象”からファッションやシーンに合わせて選べるオススメのクリームについてお話ししたいと思います。
クリームが見た目の印象に与える影響は成分量のバランスによって変化します。=革に与える効果も変わるということです。
違いを知ることで、「どんな洋服やシーンに合わせて靴を履きたいか?」「靴がどんな成分を欲しているのか?」など、ご自身のニーズに合わせてクリームも選びやすくなるので、参考にされてみてください。
こんな人にオススメ
- どのクリームを使おうか迷っているひと
- シューケアに必要なものを知りたいひと
- これから本格的にシューケアを始めたいひと
シューケアの目的と役割
クリームを選ぶ前に「シューケアの基本」を少しおさらいしておこうと思います。“何のために”“どんな目的で”シューケアが必要なのかというポイントです。
わかってるよ!と、いう方は読み飛ばしてください。
シューケアの目的
シューケアの目的は革を綺麗に保つことです。そして、綺麗に保つことの意味合いは3種類あります。
- 汚れ落とし:革に付着した汚れ、ダメージとなる有害物質を取り除く
- 保湿:革に栄養を与える、栄養補給
- 保護:外的なダメージから革を守る
革は何もせずに放置すると、乾燥や衝撃による傷や割れなど、あらゆるダメージを受けやすいデリケートな代物です。
革の質感を損なう前に「汚れ落とし、革の状態維持」をするためのケアを行います。
クリームの役割
革にとって大事な「保湿」「保護」をおこなってくれるのがシューケアクリームです。
また、クリームの種類も保湿に特化した「デリケートクリーム」、保護に特化した「油性クリーム」などいろいろありますが、靴に大きなダメージが見られない限りは「乳化性クリーム」を選びましょう。
乳化性クリームは「保湿、保護」をバランスよく補ってくれます。
商品説明欄に「種類:乳化」とあるものであればOKです。
シューケアに必要なアイテム
- 汚れ落とし:レザークリーナー
- 保湿、保護:乳化性クリーム
クリームで栄養補給をする前に、汚れ落としをしっかりおこないます。
汚れを落とさないまま、クリームを塗布すると古いクリームや土ほこりの上にクリームを塗るかたちになり、「栄養が浸透しない、ダメージの要因が革に残る、表面に凹凸が表れ仕上がりが汚く見える」など、様々なデメリットがあります。
シューケアを行う上で、この2つのアイテムはおさえておくようにしましょう。
ケアが必要になる時の革靴の状態は「乾燥、ひび割れ、泥汚れ、雨染み、カビ」など、水分量も質感もその時々で様々です。 あわせて、これだけの汚れを落とさなければいけないクリーナーは非常に強力なので誤った使い方をすると革にダメージを与えてしまうこと[…]
仕上がりの印象を変えるポイント
見た目の印象を左右するのは、乳化性クリームに含まれる成分のバランスが大きく関係しています。「成分と印象」のポイントがわかれば、この記事で紹介しているもの以外の製品も選びやすくなると思います。
乳化性クリームの成分と効果
- 水:“内側”に浸透し、保湿
- 油:“表面と内部”の繊維にまとわりつき、保湿
- ロウ:“表面”の保護
クリームと言われる商品の場合、基本的にはこれらの3つの要素で構成されています。
この成分のバランスが製品別に異なるため、見た目や効果に変化を与えることになります。
成分のバランスが仕上がりの印象を変える
- 水:内部の瑞々しさ、革本来の質感が強調
- 油:陰影を強調する柔らかい光沢
- ロウ:ずっしりと重厚感のある光沢
水はしっかり浸透し保湿する反面、揮発しやすいため、革本来の質感が表れやすいです。その為、革そのものの自然な風合いがカジュアルな印象を与えます。
逆にロウは保護をするための成分ですので、表面をガッチリとコーティングし、硬めの光沢で重厚感を表します。そのためフォーマルな印象を与えます。
オススメのクリーム
今回は「上品な印象でどんな場面でも使えるもの、かっちりフォーマルな印象、革の風合いを活かしたカジュアルな印象」の3種類で厳選したオススメのクリームをご紹介します。
ビジネスシーンで使いたい人はフォーマル、日常使いならバランスorカジュアルというようにご自身のイメージに合わせて参考にされてみてください。
【オールマイティー】上品な仕上がりと保湿効果
Boot Black (ブートブラック)/ SHOE CREAM
- 印象:オールマイティー
- 質感:潤いが強く、伸びがいい
- 成分:ろう、油脂、有機溶剤
コロンブスという有名なシューケア用品のメーカーさんが開発したジャパンメイドの靴クリームです。
カジュアルなローファーからビジネスシューズ、革小物までこれさえあれば十分!と、いうくらい革製品が好きな人には絶対オススメのクリームです。
水分量が多く伸びがいいのが特徴です。潤いが革に馴染み、非常によく浸透します。また、上品なツヤ感があるので、ギラギラせず、カジュアルすぎない中間的な印象で非常に使い回しが良く重宝します。
加えて、浸透率の高さによりエイジング効果も期待できます。使い古した光沢を出したい方にもオススメです。
【フォーマル】保護に適した高級感の代名詞
SAPHIR(サフィール)/ ビーズワックスファインクリーム
- 印象:フォーマル
- 質感:ロウ成分が強く、適度に硬め
- 成分:ビーズワックス、カルナバワックス、アーモンドオイル
SAPHIRは蜂のマークが印象的な1世紀もの間続くフランス産の名門ブランドです。
自然由来の成分が革にも優しく、エルメスやルイ・ヴィトンなどのハイブランドでも採用されています。
革の保湿と保護をしっかりとケアしてくれる高級靴クリームといった印象で、適度に硬さのあるクリームになっています。また、顔料が多く含まれているため靴に残った傷やスレなど細かいものであれば綺麗な質感を取り戻してくれます。
さらに、大きな特徴としてロウがふんだんに使用されているため、重厚感のある光沢が仕上がりにでます。ドレスシューズやビジネスシューズ、フォーマルな場面で愛用する靴にオススメです。
【カジュアル】自然な風合い、しっかり保湿
M.MOWBRAY(モゥブレィ)/ クリームナチュラーレ
- 印象:カジュアル
- 質感:とろり、もっちりとした質感のクリーム
- 成分:ろう、油脂(シダーオイル、パームオイルなど)
モゥブレィは暮らしに寄り添ったコスパ重視の靴クリームがラインナップに豊富なブランドです。
どこの靴屋さんにいっても必ずおいてあるというくらい有名ですが、今回はその中でも一段上のプレステージシリーズからのご紹介です。
クリームナチュラーレは有機溶剤の使用を限りなく抑え天然成分にこだわった製品です。そのため、クリームが自然に革に馴染みやすく、革そのものが整うといった印象を与えてくれます。
仕上がりの質感は非常にマッドで、カジュアルな印象ですが内側からもっちりとしたハリ感が加わり、革に柔軟性を取り戻してくれます。
内側からの美しさをキープしたいデリケートな素材に適しています。
ブランド別の特徴
ここまで、ご紹介したクリームはどのブランドもシューケア用品として基本といえるほど有名なメーカーさんのものです。そのため、これからシューケアを始めたい方にとって、今後様々なクリームを扱う上で特徴を掴みやすいものになっています。
とはいえ、はじめから全部揃えて使うのも怖いと思うので、紹介したクリームに限らず扱っている製品の特徴、傾向を私なりに補足しておきたいと思います。
コロンブス
ニーズに合わせて適切な役割に特化したバランスの良い製品が多い印象です。
革本来の自然な美しさを引き立たせながら、補色やコーティングなどの補助的な役割をバランスよく補ってくれます。
SAPHIR(サフィール)
一つ一つの効果が顕著で、高級感に特化した製品が多い印象です。
革の保護、持続力、大きなダメージへのケアなど、期待する効果がわかりやすく靴の表情にあらわれます。しかし、個性を出しつつも全体として不自然なバランスにならないのがシンプルにすごいな〜、と思うブランドです。
「靴は傷つく!でも綺麗に保ってやる!かっこよくね!」という男前な感じです。
M.MOWBRAY(モゥブレィ)
とにかく手に取りやすく、ナチュラルを極めた製品が多い印象です。
栄養補給や保護といっても、どこか人工的に手を加えるので、革そのものの表情を完全に残すことは困難ですが、M.MOWBRAYの製品はなるべく素材を残した状態でキープします。
その反面、揮発性が高く、余分なものは残さないといった印象です。
持続性という意味であれば、しっかりと革に栄養や皮膜が残るものがいいです。しかし、それは同時にクリーナーをかけてもクリームを落としづらく、革をリセットしたい時には不向きな側面もあります。革にクリームが残りづらく余計な油分がないということは、しっかり古い汚れやクリームを落とし、栄養を浸透させやすくしてくれます。その点では、こまめなケアをされる方にとって最適だともいえます。
まとめ
- クリームの役割は保湿と保護
- 使用するクリームの種類は“乳化性”がオススメ
- 印象と効果は成分のバランスに影響を受ける
今回ご紹介したクリームは使い分けのしやすいラインナップでもありますので、懐に余裕のある方はシーンに合わせて使用させれるのもオススメです。
また、シューケア用品の中ではどれも定番のメーカーさんのものになりますので、今後シューケアを本格的に始めたいというかたは業界の平均的な水準も掴みやすいと思います。