「靴は人を表す」 最初はそんな言葉に背中を押されて始めた靴磨きでした。しかし、のめり込むほどに気づいたことがあります。
それは、人からどう見られるかという「外側」の視点よりも、内省を通して自分と向き合う「内側」の時間そのものを、私は楽しんでいるということです。
今回は、靴磨きという体験を通して私が見ている世界について、少しお話しします。
モノに宿る「物語」を愛でる
革製品やアンティークなど、時を経て変化していくもの。その魅力の本質は、モノ自体の価値以上に、そこに関わってきた「人の物語(ストーリー)」を感じられる点にあるのではないでしょうか。
大切にされてきたモノには、たとえ傷や汚れがあっても、どこか温かさがあります。 それは汚れたまま放置されていた訳ではなく、清潔に保たれ、手入れされてきたプロセス(背景)が見えるからだと思います。
人間に例えるなら。 光も影も、拭いきれない過去もすべて受け入れ、今を生きている。 そんな「佇まい」に、私は惹かれるのです。
「複雑系」を体現する遊び
私はついつい思考過多になりがちなタイプです。 論理(ロジック)で物事を捉えようとすると、「この問題の原因はこれだ」と、一つの正解や因果関係を無意識に探してしまいます。
しかし、現実はもっと複雑で、正解も間違いも割り切れないことばかりです。 理屈だけで結果を出そうとすると、どこか息苦しく、退屈に感じてしまうこともあります。
靴磨きは、そんな私にとっての「リハビリ」です。
クリームの成分が革に与える質感、その日の湿度、磨く力加減・・・。
それら複数の要素が相互に絡み合う「複雑系」の中で、自分の感覚だけを頼りに、理想の表情を探っていく。
頭で考える「正解」を一度手放し、指先の感覚で実験を繰り返す。 そうして没頭しているうちに、不思議と日常の悩みから切り離された自分がいることに気づきます。
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「今、ここ」に立ち返るマインドフルネス
実際に、靴磨きには”マインドフルネス(今この瞬間に集中する状態)”に近い効果があると感じています。
脳科学の世界では、何もしていない時ほど脳は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という回路を働かせ、膨大なエネルギーを使って情報を整理していると言われています。放っておくと脳は勝手に「過去の反省」や「未来の不安」へ彷徨い出してしまうのです。
Appleの創業者スティーブ・ジョブズが、散歩をしながらアイディアを練っていたのは有名な話です。歩く、あるいは靴を磨くといった「リズムのある単純作業」に没入することで、脳内の雑音が消え、新しいひらめきが生まれる余白が作られます。
思考の荒波に飲み込まれるのではなく、一度川岸に上がって、流れる情報を静かに眺めるような感覚。 この心地よい静寂こそが、靴磨きが私にくれるものです。
まとめ:創造性を発揮するための準備運動
私にとって靴磨きは、単に靴を綺麗にする作業ではありません。それは、「自由で創造的な自分を取り戻すための準備運動」です。
思考を使い続ける時、私たちの視界には定義や法則、正しさのような「制限」しか映っていません。 でも、心を整え、捉え方を変えることができれば、世界はもっとフラットで「選択」のある場所に変わります。
靴が綺麗になり、心も整う。 そんな一石二鳥のリハビリを楽しみながら、私はいつも靴を磨いています。